先日泊まった温泉宿で白菜の古漬けが出た。白っぽいベージュ色に色が変わって、酸っぱくなったやつ。ちょっとだけしかなかったんだけど、懐かしくて、おいしかった。明治生まれのおばあちゃんとおじいちゃんと一緒に暮らしていた私の子どもの頃は、冬になると白菜を束で買ってきて、大きな樽に漬け込んだ。最初の頃は塩がきいた若くてしょっからい浅漬け。乳酸発酵が進み次第次第に酸味が出てきて、奥深い味わいのおいしい白菜漬けになる。古漬けの最後は、塩出しして細かく刻んで、ちょっと醤油を回しかけ(当時はこれに味の素をちょこっとかけるのが当たり前だった)、あつあつの真っ白いご飯にのせて食べる極上メシが待っている。これが最高にうまい。大好物だった。漬け込んだ白菜を樽からあげる時、「本当に白菜からだけの水分?」てほどたっぷりと上がった水分が発酵していて、白っぽい膜のようなものが浮いていたりなんかもした。「気持ち悪い~こんなの食べてるんだ~でもおいしい~」と思ったものだ。おじいちゃんもおばあちゃんもとうに死んでしまい、東京の冬もあたたかくなり、あんな大きな樽を置いておく広い軒下もなくなり、家族も減り、大樽で白菜を漬けることもなくなったけど、あの味は舌がしっかり覚えている。スーパーで買う白菜漬けもそれはそれでおいしいけど、まったく別物なんだよなあ。
温泉から戻り、冬晴れ続きのここのところの寒さもあり、「もっと食べたかった~」と冷蔵庫に残っていた何枚か外葉を使った小玉白菜の残りで、何年かぶりに漬けた。梅干し作りでも活躍したこの樽や重石は、もともと白菜を漬けるために買ったもので、こうやって道具が一通り揃っていれば、漬け込み作業はとても簡単なのであった。

割った白菜を半日~1日干す。

白菜の重さの3%の粗塩を葉っぱの間にも振りこんで全体にまぶし、白菜の約2倍の重しをのせて漬け込む。昆布と唐辛子と柚子を加えて。

1週間。水もあがり、容器を変えて冷蔵庫に引っ越し。

柚子の香りの浅漬けもさっぱり、おいしいのでした。古漬けになるまでもつかなあ。もっと漬ければよかった。
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